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辛いなあと感じるときには、それとは矛盾する事実(根拠)を並べ立てていく。とるに足らないささいなことでも、それがいくつか集まれば、辛い気持ちに反撃しようとするきっかけになるものです。 ただし、結果や事実を並べるだけでは、人間の凝り固まった考えを改めさせることはできません。そのためには、アピール行為、つまり「ダメではない」と反証する必要があります。 辛い気持ちになったとき、「本当にダメなのだろうか?」という疑問から始まって、「ダメじゃないんだ」と考えられるように自分自身を仕向けることができると、気分が楽になるだけでなく、現実に適応して問題を解決する能力も生まれます。 たとえば、仕事のやり方に関して、上司や同僚から、 「お前の場合は暴走しすぎだ。間違っている」 などと厳しい言葉を浴びせられたり、露骨な嫌みを言われたとしましょう。そのときに、 「ああ、オレはダメな人間なのか」 「やっぱり自分は嫌われているんだ」 などと、落ち込んだり、自分の能力を悩んだりするのは、人としてきわめて正常な反応だと思います。 ★ 相手の言われたことに心で反論する ですが、相手の言葉に影響されて頭に浮かんだ「自分はダメ人間だ」「嫌われ者」という自分自身への評価をそのまま素直に信じ込んでしまうとしたら、それは自分をおとしめてしまうことになります。 こんなときは、反証を試みるのが有効な方法のひとつです。 たとえば、こんなふうに考えます。 「たしかに、上司はオレに不愉快な感情を抱いたかもしれない。でも、だからといってオレのやり方がすべて間違っていると考えるのは、短絡的すぎないか?少なくとも、若い自分が、間違いを恐れずにチャレンジするというプロセスは正しいはずだ」 あるいは、 「嫌みのひとつも言われないようじゃ一人前とは言えない。それに、調子を合わせていれば、上司には扱いやすいヤツだと思われるかもしれないが、それは新しい風になることを放棄することになるし、いま自分がここにいる意味がなくなる。見方によっては、上司がそんな余裕のない発言をするのは、オレにそれなりの影響力があるとも考えられる」 というように、とにかく何でもいいのですが、「自分はいつも正しい」とか「もう何をやってもダメだ」というオール・オア・ナッシングではなく、グレーゾーンの考え方をしてみましょう。 ★ 相手の言葉に過剰に反応しない 「たしかに批判や修正を受け入れなければならない余地はあるけれど、すべて認めるわけではなく、自分にもよいところはあるのではないか?」 と、あえて疑問形にして柔軟に感化瀬得ることが、相手の言葉に過剰に反応しないためのコツです。 そして、この疑問形的思考は、あなたがほかの人に話しかけるときにも役立ちます。落ち込んだり、悩んだりしている相手を慰めようとして、安易に「気にいすぎだよ」「大丈夫だよ」などと断定形でいうと、たとえそれが善意からであっても、たいていの場合は、「人の気も知らないで」「どうせ他人事だと思って」と、相手を怒らせ、精神的にも追い込んでしまうものです。 そういう相手には、「辛い気持ちは分かるよ」と、しっかりと気持ちを受け止め、相手にあなたが味方だということを確認してもらったうえで、 「でも、そんなに悪く考えることもないのでは?」 と問いかけたほうが、表面的にではなく深い部分で相手の心に近づいてアドバイスをしたり、元気づけたりできるものです。 人の心に少しでも踏み込む以上、断定形ではなく疑問形にしておくのはひとつの礼儀だと思うのですが、そんなことにはお構いなしに土足で踏み込んで、「お前はダメなヤツだ!」と言いたい放題の人というのは意外に多くいるものです。 そんな人は、職場で自分が嫌われていることすら気づいていないのです。 |
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