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世の中には、孤独が好きな人や一匹狼といわれる人が存在します。 しかし、そんな人までがまったく他人とかかわらず生きていくことは不可能です。そして、少しでも他人とかかわれば、お互いに何らかの役割を期待し合わずにはいられないのが、人間という生き物です。 また、人間には大変思い込みが強いという特徴があります。ですから、本人の期待(願望)と周りからの期待にズレが生まれることがしばしばあります。 夫婦間のケースでいえば、夫が「女は家庭を守るべきだ」と妻に専業主婦であることを望んでいても、妻は「外で仕事をもって働きたい」と思っているという話は、本当によくあるズレでしょう。 こうした期待のズレは、いつしか大きなストレスとなって頭を悩ますこともあります。 上司は、部下が自分の考えや仕事の進め方を理解してくれていると思っているのに、じつは部下はそれに反対の意見を持っている。そのため部下は、上司に振り回されることになり、結果的にストレスを溜め込んでしまいます。 こうしたズレは、たとえ親子や夫婦であっても、考え方や感覚が違う人間同士なのですから、あって当たり前です。だから、ズレがあること自体は問題ではありません。むしろ問題は、ズレを修正できずにストレスを生んでしまう人間関係そのものにあるのです。 夫婦の離婚原因として、よく「性格の不一致」という言葉が使われますが、この表現は正確ではありません。正しくは、「性格の不一致を改善できるほどのコミュニケーションがなくなってしまった」と言うべきでしょう。 さらに厳しい言い方をすれば、性格の不一致を修正していける相手かどうかも見極めずに、結婚してしまったふたりのコミュニケーションの浅さが、離婚の原因だということになるでしょう。 そうなると、もはやお互いの関係を修復するエネルギーは残っていません。離婚がきっかけで、ウツ病にかかる人が少なくないのはそのためです。 では、性格や期待のズレにはどう対処すればいいのでしょう。 ★ きちんと話さなければ解決しない 悩みや辛さというのは、漠然と考えるだけではなくなってくれません。ウツになってしまうほど辛い状態に追い込まれる前に、現状を分析することが大切です。 週末の過ごし方をめぐってケンカをしているカップルがいるとします。 女性のほうは、週末はいつも相手といっしょに過ごしたいと望んでいて、相手が会ってくれないのは愛情が薄いせいに違いないと悩んでいます。それに対して、男性は恋人も大切だが、仲間との付き合いも大事にしたいと考えていて、週末をデートにだけ費やしたくはないと思っています。 こんな状況を、女性は次のような段階を踏んで解決しようとします。 @ 再交渉 「どうして私といっしょに過ごしてくれないの?」 女性のこの言葉は、相手が変わってくれることを期待するために出てきます。これは、男性が自分にどんな役割を期待しているのかを認識するためには必要なことでしょう。さらには、 「なぜ仲間との付き合いがそんなに大切なの?」 「どうしたらいっしょにいてくれるの?」 と、より深いコミュニケーションの方法を探るのが効果的です。 A 沈黙 「いっしょに過ごしたいといっても、言うことを聞いてくれない。でも、別れてしまったらもっと寂しいし・・・」 これは、あの人には何を言ってもダメだというあきらめの境地に達し、何か言う気力さえなくなってしまった状態といえます。 でも、まだ再交渉してみる価値はあります。たとえば、 「私に原因があるなら話して。直すから」 と、相手が自分といっしょにいるよりも仲間と過ごすことを優先する理由を見つける努力をし、ふたりの関係修復の可能性を探ってみます。 もしかしたら、話し合っているうちに、自分はけっして疎まれているわけではなく、男性にとってデートの頻度と愛情の深さは関係ないのだと気づくかもしれません。そこで男性の考えに女性が納得できれば、たとえ男性の行動が変わらなくても、思わぬ修復への道が見えてくるかもしれません。 B 離別 「会いたいときに会ってくれないような冷たい男と、つき合っていても仕方ない」 こうなるともはや解決は不可能です。すべての可能性を試しても、ふたりの期待のズレを修正することはできなかったのですから、あきらめるしかないでしょう。 これは、あくまでも恋人同士の話であって、夫婦や親子、あるいは職場での人間関係では、そう簡単に関係を断ち切ることは難しいでしょう。仕事が辛いからといって、辞めれば楽になるかといえば、けっしてそうではないのといっしょです。 お互いを大切に思っているからこそ、期待が大きくなって気持ちのボタンのかけ違いが起こり、それがケンカにまでなってしまうのです。そうなるとコミュニケーションどころではありません。感情のぶつけあいになって、いつも最後はののしりあいで終わってしまいます。それではお互いに辛くなる一方です。 ★ 解決策を探る3つの糸口 その辛さを少なくするには、感情はひとまず横において、客観的、現実的な対策を考えるしかありません。 具体的には、次のようなポイントに注目するといいでしょう。 ● 原因は何なのか? かつてうまくいっていた関係が悪くなったのなら、当然そうなった原因があるはずです。まずは、それが何かを突き止めるのが先決でしょう。 昔と変わってしまったところはないか? もしあるとしたら、それはなぜか? 元に戻せるものなのか? あるいは、もともと自分または相手にいたらないところがあったのに、どちらかが我慢をしていたのか? そんなふうに考えてみてください。 ● 価値観や期待のズレはないのか? 人間関係がうまくいかないときには、お互いが前提にしているものが違っていることが多いものです。価値観や相手に対する期待といったものがそれに当たるでしょう。 たとえば、進路問題を巡って親子関係そのものまで悪くなってしまったとしたら、それはやはり価値観の違いが原因でしょう。そんなとき、もしもあなたが親なら、自分の考えを押し付けずに、 「あの子には、親の私とは違った考えがあるのかもしれない」 というところから考えて、話し合ってみることが大切になります。 ● まだ試みていない解決手段はないのか? 「私はひとりで悩んでいて、相手は何も考えようとしない」 と、あなた思っているとしたら、まずそれが問題です。問題解決のための努力を何もしていないわけですから、うまくいかないのは当然です。ふたりの問題なのですから、ひとりであれこれ考えるだけでなく、ともに話し合ってください。 そのとき、ふたりだけでは感情的になって冷静に話し合う自信がないというのなら、誰かに立ち会ってもらうという方法もあるでしょう。 やはり、ズレを解消するにはコミュニケーションを積極的にとること以外に手段はありません。 ★ ケンカ別れも解決方法のひとつ 期待のズレを修正するためには、コミュニケーションをとることが有効です。しかし、実際には、一方がコミュニケーションをとろうと思っていても、それが相手に伝わらない場合があります。 たとえば、あなたと友人のAさんが、あることで仲違いしたとします。そして、あなたは仲直りをしようとAさんに話しかけます。 あなたは、やさしい心の持ち主で、相手に気を遣うために、どうしても回りくどい言い方になってしまいます。 一方のAさんはまったく逆で、思ったことを何でも口に出してしまうタイプで、少し気が強く、他人に対して思いやりに欠けるところがあります。 あなたにすれば、相手に気を遣って言葉を選んで慎重に話しているつもりなのですが、Aさんにすれば「また、うじうじ言い出した」としか感じられません。すると、あなたがいくら関係を修復しようとしてもなかなか仲直りはできません。 このように、コミュニケーション自体が成り立たないというケースは本当によくあります。 また、ズレを修正することは、必ずしも問題解決や仲直りにつながらないこともあります。コミュニケーションをとった結果、お互いの期待のズレが決定的になることだってあります。 しかし、それはけっして悪いことではありません。 たとえ言い争いになっても、お互いが本心をぶつけ合うことで、相手の本心がわかるということがあるからです。 このように、問題に直面することを避けるために溜め込んでしまったストレスを減らすには、腹をくくって相手と向き合うことです。それで、仲直りができればいうことはないですし、もしも決定的に意見が食い違ってケンカ別れをすることになっても、それはあなたにとってはよかったといえます。 |
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