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政治家の世界では、 「あなたがそう言うのを聞いた」 「いえ、私は言っていません」 などというやり取りをよく目にしますが、こうした政治の世界での行き違いは、どちらかが自分に都合のいいようにウソをついていることが多いものです。 それと同じように、私たちの日常でも、「相手は十分に分かっているはずだ」という勝手な思い込みが、お互いの勘違いを生むことがあります。 人は本来身勝手であり、面倒くさがりな生き物ですから、いちいちはっきり言わなくてもわかってほしい、行動してほしいと他人に対して期待する一面があります。 言わなくても気がつく人には、「気配りのできる人」という褒め言葉が使われるくらいですし、ただお金をかけるだけでなく細かい配慮の行き届いた接客のほうが大きなビジネスにつながるともいわれます。 それが、自分からわざわざ言ったのに、期待どおりの反応や言葉が返ってこないと、相手に対して欲求不満や怒りといった不快な感情が湧いてきます。 このように、「言った」「いや聞いていない」といったような行き違いは、言ったほうの心の病やウツにつながることが少なくないようです。 つまり、相手が自分の話を聞かないのは、「自分を軽視しているから」であり、さらにマイナス思考が働いて「自分の性格や能力に問題があるからだ」と決め付けてしまうのです。 しかし、たとえ相手があなたの話を聞いていなかったとしても、それは必ずしもあなたのせいだとはかぎらないでしょう。 相手は忙しくても心に余裕がなかったかもしれないですし、寝不足が原因ということもあります。あるいは、それが酒の席での話であれば、酔っていたせいかもしれません。つまり、あなたが相手の習慣や体調、能力といったものを考慮せずに、過剰な期待をしていたとは考えられないでしょうか。 気をつけたいのは、「言うこと」と「伝わること」とは、似て非なるものだということです。 相手に言ったからといって、それが必ずしも伝わっているとはかぎりません。あなたの言ったことを相手が覚えていないからといって、それをまるで自分の存在まで無視されたかのように感情的になって相手に悪い印象を抱くのは、 「私という人間に、常に最大限の敬意を払え」 と言わんばかりの傲慢な態度とすらいえるのです。 大切なのは、言いぱなっしにするのではなく、相手の意見や反応を引き出し、伝えたということをあなた自身が実感することです。そのためには、誤解を与えないよう、わかりやすく、丁寧に伝えようと心がける必要があるでしょう。 一方、言われた側が言われたことの真意を測りかねて、辛い思いをすることもあります。時間が経つと、言った側の記憶は薄れる反面、言われた側のほうでは、悔しさや恨みが無限にふくらみ、お互いの認識のズレの修復が難しくなるものです。 ですから、たとえささいなことでも、心に引っかかることがあったら、面倒がらずにしっかり確認することが重要といえます。 コミュニケーションの責任は、自分と相手、言ったほうと言われたほうに、それぞれ半分ずつあるのです。 |
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