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「人を見たら泥棒と思え」ということわざがあります。 他人をそう簡単に信用してはいけないというたとえですが、これだけ世の中が物騒になると、このことわざもあながちオーバーだとは思えなくなります。 また、さまざまな場面で競争のある現代社会では、人と人との心の駆け引きというものが多く見られます。仕事の商談や面接試験などでは、 「この人は何を考えているのだろう?」 「なぜそんな質問をするのか?」 などと、相手の心を読んで、どう発言すればいいのかを考えたりします。 このように現代人というのは、昔の人に比べて警戒心が強くなっているのかもしれません。 ただ、そうした人の心の裏を読むのが高じて疑心暗鬼になり、何でも悲観的にとらえるようになると、考え方がゆがみ始めているサインといえます。そうなると、深読みや先走りがどんどんひどくなっていき、精神的な辛さを感じるようになり、ウツ的になってしまうのです。 ★ 深読みして悲観的になるとダメ たとえば、商談している相手が、話の最中にあくびをしたとします。そのときあなたはどう思うでしょうか? もし、心が正常な状態であれば、何ごともなかったようにやり過ごしますが、「お疲れですね」という言葉のひとつもかけられるでしょう。その人はたまたま徹夜で仕事をしたために、あくびが出てしまったのかもしれないからです。 ですが、気持ちが疑い深くなっていると、 「オレの話がそんなにつまらないのか?」 と自分の能力のなさを責めて、落ち込んでしまうことがあります。 あるいは、あなたが結婚したばかりの奥さんだとします。 帰宅した旦那さんに、今日一日のできごとの話をしていると、旦那さんはどこか上の空の様子。普通なら、 「何を考えているの?」とか「ちゃんと話を聞いてよ」というでしょう。 旦那さんはちょうど難しい仕事を控えていて、そのことで頭がいっぱいなのかもしれません。ところが。あなたの心が不安定だと、 「もう私に飽きたのかしら?」 と極端に考えてしまい、強い不安に襲われたりするのです。 また、誰かに留守番電話にメッセージを残し、その人は忙しくて返事ができないだけなのに、 「自分は嫌われているんだろうか?」 と悪いほうに考えて、その日一日何も手につかなくなってしまう。これなども、考え方がゆがんでいる例といえるでしょう。 ★ 疑って傷つきやすい性格は自分の心にある こうした経験は誰にでもあるものですが、それがあまりにも頻繁に起こり、辛さが増すようになると、その原因はその人の心の中にあるといえます。 なぜ、何でもかんでも疑ってしまうのか。 その原因は、傷つきやすい性格、何かに対するコンプレックス、対人関係の悩み、社会的背景、生い立ちなどさまざまです。いくつかの要素が組み合わさっている場合もあるので、原因を探してもきりがありません。 もし、わかったとしても簡単になくならないものもあります。 ★ 本人で変えることができないものは放っておき、現状を変えてみる こんなときは、本人がどうしようもできないことは捨て置き、現状の問題に焦点を当てるべきです。 これは、受験生や恋愛に悩む女性をイメージしてもらえばわかりやすいはずです。 たとえば、ある高校生が大学受験に失敗してしまったとしましょう。 彼にすれば、浪人生活を送らなければならないのは、それこそ死んでしまいたいほどショックなことかもしれません。 ところが、努力して一年後に第一志望の大学に合格すると、 「一年くらい浪人したほうが、あとの人生にはためになるんだ。現役で受かってしまったら、世間知らずのお坊ちゃんになってしまう」 などと、あれほど思い悩んでいたのがウソのように、失敗さえもポジティブにとらえられるようになります。 あるいは、自分が失恋したことについて、「私が美人でないから」「家柄が悪いから」「両親の育て方がよくなかったから」といったさまざまな理由づけをしていた女性が、自分の理想とするような新しい恋人ができたとたん、 「あの失恋は私に与えられた試練だったのよ」 他人ごとのように余裕をもって過去を振り返れるようになれます。 ★ 深読みで辛くなった気持ちを抜け出すには @ 現状をしっかり確認する A 深く、広い人間関係を充実させる という二つを強く意識することが必要です。 たとえば、先ほどの例に当てはめるとこうなります。 あくびをした相手には「眠いのですか?」と聞く。話を聞いてくれない旦那さんには「何か悩みごとでもあるの?」とたずねる。電話をくれない相手には、もう一度電話してみる。コミュニケーションをしっかりとって、相手の意思や考え方を確認することが大切です。 それに対し、相手が、 「いやぁ、夕べは徹夜だったもんで」 「ごめん、仕事のことを考えていた」 などと答えたら、その時点で悩みは解決です。 また、もしも相手のあくびや上の空の原因があなたにあったとしたら、何がいけないのかを相手に聞いて、その対策を具体的に考えればいいのです。 ですから、深読み、先走りをしている自分に気づいたら、自分自身を分析しすぎないこと。分析しすぎると自滅してしまいます。そんなときには、あくまで現実問題と周りにいる人に目を向けるのがポイントです。 |
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