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「そんなことを口に出して言うなんてヤボだ」 「口だけならいくらでもきれいごとを言える」 あなたがそう思っているとしたら、それは言葉が持つ意味や力をあまりに軽視しすぎているといえるでしょう。 自分の気持ちや考えを率直に表現するのを恥ずかしがったり、臆病になったりする人というのは、自分の主張の要点を他人にわかってもらおうとする際に、言葉によらないコミュニケーションや行動によって示そうとします。 これは、子どもを例にとるとよくわかります。 子どもは、怒ったときには、相手に反対したり抗議したりする代わりにすねてみせますし、好きな女の子には好きだと言わずに、わざと意地悪します。 また、思春期の女の子が、友だちができずに寂しいと感じたときや好きな男の子にフラれて喪失感に襲われたときに、周りからの関心をひこうと発作的に手首を傷つけるというケースはよくありますが、これも同じ種類の行動です。 やった本人にすれば、 「どうして自分の気持ちをわかってくれないの?」と、相手を不当に責めたり、うまく気持ちを伝えられない自分に嫌気がさしたりします。 一方、された側にすれば、 「この人は何を考えているのだろう?」 と真意をはかりかね、どうしたら相手の気持ちにうまく応えてあげられるのか分からずに、結局はお互いの溝は深まってしまうわけです。 「言わなくても分かってほしい」という甘え、「そんなことは言わなくても当然分かるべきだ」といった思い込み、そして「言わなくても分かり合える人間関係があるべきだ」という自尊心の肥大・・・。 意思を伝える努力もしていないのに、相手に自分の気持ちを分かってもらおうという自分勝手な考えが、相手との行き違いを生んでいるのです。 私たち日本人は、お互いが理解し合っている様子を「以心伝心」という言葉で表現する国民です。 何から何まで口に出して言わなければわかってもらえない関係というのは、たしかに面倒であり、辛い気持ちになるのもわからなくはありません。 だからといってコミュニケーションをとろうとせずに誤解を生み、他人を不愉快な気持ちにしてしまう姿勢は、決して正当化されるものではないし、結局は自分自身を辛くしてしまうのです。 もしもあなたが口に出しても言わなくても分かってもらえる関係を望み、相手にそこまで気を配ってもらいたいのであれば、そうした関係や配慮がないこと自体にあなたが不満を持っていることを相手に分かってもらう必要があるでしょう。 最初から、何も言わなくても分かってもらおうとするのは傲慢であり、それではふたりの関係が進展するはずはありません。 やはり話し合いから始めるのが、相手への礼儀であるといえます。 コミュニケーションというのは、お互い対等な立場でとるのが基本なのですから。 |
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