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私たちは気が滅入ってくると、知らず知らずのうちに道徳的な考えに縛られすぎて、自分を追い込んでしまうことがあります。 社会生活を送るために、正義感に基づいて生きるのは大事なことですが、何でもかんでも正しく、しかも完全に行わなければ気がすまないということになると、考え方に悪いクセがつきつつあり、それがウツの体質になってしまうのです。 ★ ウツになる人は必要以上に考えすぎて自分を責めている 「仕事は完璧にやらないと意味がない」 「親は期待してくれている。それに応えなければ、いい人生とはいえない」 「やりたい仕事ができないなら、生きている価値がない」 「人間は楽をしようと思ってはいけない」 「相手に不愉快な思いをさせるくらいなら、たとえ納得がいかなくても自分が我慢するほうがましだ」 「すべて私が悪い」 というように、必要以上に道徳的に考えすぎると、生き方の選択肢を狭めてしまい、結果的に自分を精神的に追いつめてしまうのです。 ★ 自分を追い込まないため、自問自答してみる 「本当のオレは、そんなに道徳的な人間なのか?」 「すべてにおいて私はそんなに優等生なのか?」 それに対する答えは「ノー」であることが多いはずです。 理想や道徳心は、充実した人生を送るためのひとつの支えにはなるでしょうが、それに縛られるあまり、考え方や生き方をゆがめてしまっては本末転倒です。自分の心と体が健康であればこそ、他人を労わる気持ちも生まれるものです。 自分を犠牲にすることもときには必要でしょうが、度がすぎてはいけません。自分をかわいがる気持ちも持っていなければいけないのです。 ★ 罪悪感と葛藤しているうちに心が病んでウツになってしまう例として、お年寄りを介護する女性たちがあげられます 高齢化が進む一方の日本では、介護が必要なお年よりはますます多くなり、介護に頭を悩ませる女性の数も同じように増えましたが、「介護は身内でするもの」さらにいえば「介護は嫁の仕事」と考える男性は、まだまだ日本に多いようです。 しかし今の日本では、男性と同じように外に出て働く女性が増えています。それに、お年寄り本人の痴呆症などの症状が進めば、家族の手には負えなくなって、やはり施設に預けて専門家に介護してもらう必要も出てくるでしょう。 ですが、結婚している女性のなかには、夫の親を施設に入れることについて罪悪感を抱く人が少なくありません。それは、夫や兄弟から「施設なんてけしからんと言われそうだから」という人もいれば、「在宅介護こそが本当の介護だ」と信じて、かたくななまでに家で看ることにこだわる人もいます。 いずれにしても、その罪悪感に縛られすぎると、最後には介護する女性本人がつぶされて、ウツになってしまうことが多いのです。 そこまで追いつめてしまう夫、放っておく家族も悪いのでしょうが、追いつめられてしまうと、人は何でもやるものです。 介護に疲れた人が寝たきりのお年寄りを蹴飛ばしたり、家のなかで何十枚もの皿を叩き割ったりした例もあります。それらは何もその人が特別だったのではなく、追いつめられれば辛さを発散させるために誰もが起こしうる行動なのです。 そんな女性が自分自身を守るためには、親戚の誰かに介護を代わってもらったり、お年寄りを施設に入れたりするのもやむを得ない選択肢といえるでしょう。 ★ ウツにならないためには、義務感や責任感に縛られすぎない しかし、現実には、経済的な理由などから、介護の大部分をひとりで担わざるえない場合もあるでしょう。 しかし、そうした場合でも、「自分がやらなければ」という義務感や責任感を持ちすぎないことです。そんなきれいごとではすまないのが介護なのだともいえるからです。 「石にしがみついてでも、在宅介護する」 などという考えに縛られすぎるのは、まったくのナンセンスだと思ったほうがいいでしょう。 |
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