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ツンとした臭い匂いだ。 これはもしやと思ったら案の定ウンチだった。 コノヤローと当時は思ったが、ちゃんとトイレをしつけていない私のせいだったので、怒らずにティッシュでキレイに拭き取った。 もちろん全部拭き取れるはずもなかったが。 それでトイレを覚えさせるためにご飯を食べた後にトイレに閉じ込めるのだ。 少し可哀想だがトイレを覚えさせるためには仕方がない。 ニャーニャーと鳴く。 しかしトイレから出さない。 砂をザッザッとやってトイレをしたら出してあげる。 それを二、三回繰り返しただろうか。 そうしたらトイレを覚えてそこでするようになった。 私はホッとしていた。 これでオシッコも布団でやられたら寝れなくなるからだ。 そうして六年の月日が過ぎた。 私はうつになってしまった。 引っ越した家でも放し飼いにし、大事に育てていた。 うつでベッドに潜っているときも足の上でもっこりと落ち着いてくれた。 その感触が気持ちいい。 何より暖かい。 猫の体は人間より体温が高いので暖かいのだ。 それから手を出すと飛びついてくる。 猫キックをかまされる。 少し痛くて血が出たが、それも愛情表現の一つだと思って特に気にしなかった。 本人は遊んでじゃれているだけなのだから。 立ってぼーっとしているときも足をスリスリしてくれる。 ゴロゴロ言って寄ってきてくれる。 何とも愛らしかった。 奥さんと二人でゆうちゃん(名前)の行動を見ていた。 ゆうちゃんは一日中寝ていることも多かったが、えさをあげると必ず食べに来る。 その嗅覚はものすごかった。 えさをお椀の中から一つずつ落として床で食べるのだ。 一個落として食べる。 また一個落として食べる。 「お椀の中で食えよ」と思ったが、その姿も愛らしい。 私はうつになって思考回路が停止したが、ゆうちゃんくらいのレベルになってしまったのだろうか、と考えることもあった。 寝て起きてご飯を食べてまた寝る。 一日中寝たきりになっている。 ゆうちゃんと変わらない生活ではないか。 いや、たまに運動会をしている分、私の方が劣っているのではないか、そんなことを考えていた。 うつで苦しんでいるときは必ずゆうちゃんがそばにいてくれた。 それだけで私はとても癒されたのだ。 |
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