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奥さんの出産予定日が近づいていた。 もうすぐ生まれそうということは事前に連絡は受けていて、二週間に一回の神戸に帰る日には生まれないでくれと願っていた。 それで神戸の病院に行く日の前の晩に神戸の家に帰っていた。 出産予定日は二月だしまだ産まれないだろうと思っていた。 そして朝起きると大量のメールが奥さんからやってきていて、「これはもしかして」と思った。 案の定それは陣痛のメールだった。 「お腹が痛い。どうしようもなく腹を圧迫される。悶絶しそうだ」そんなメールだったと思う。 朝起きてしばらくすると奥さんから電話がかかってきた。 それは子供が産まれたとの報告だった。 「えぇーーー」と私は思ったがもうどうしようもなかった。 私は立ち会い出産がしたかったのだ。 しかしその願いも虚しく、無事に奥さんは出産を終えることになる。 向こうの母親が応援に来ていた。 結局携帯を布団の上に置いていて寝過ごして私は気づかなかったのである。 それで朝起きてから大量のメールが来ていることに気がついた。 どちらにしろその日は私も通院に行かなければならなかったので、立ち会うことはできなかったのだが、それでも悔やまれた。 なぜこのタイミングで産まれるのか。 私は神を呪いたかった。しかしそんなことをしても意味はない。 それから出産後の訪問をして、お宮参りを無事に済ませ、さぁあとは奥さんが帰ってくるのを待つだけだということになった。 しかし待てど暮らせど奥さんは帰ってこない。 「どうしたのだろう。子育てで何かもたついているのかな」 そう思っていた。 |
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