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この頃は辛いこともあってずっとぼーっとしていた。 何を思ったか、とりあえず立ち上がって、口をポカンと開けながら玄関の前で立ち止まることが多かった。 別に外に出ようと思ったわけではない。 とにかく何かをしていたほうが気が紛れるのではないか。 そう思って、玄関の前で三時間固まっていた。 ずーっとずーっと玄関のドアを見ていた。 そのときは何も考えていない。 ただひたすらにドアを眺め続けているだけであった。 「はぁ〜、辛い」なんてため息を漏らしながら、壁に寄りかかっていた。 ひたすら意味のない固まるという行為に徹していた。 何が好転するわけでもない。 そうすることが何かに繋がるのではないかと思っていたが、成果は全く得られなかった。 ただ布団で寝ているよりは幾らかマシな気がしていた。 ずーっとぼーっとしている。 ナマケモノみたいだ。 いや、ナマケモノのほうがもっと動くだろう。 餌を取るときには自ら動くのだから。 私の場合、自分の餌も勝手に出てきて、それを一時間くらいかけて食べる。 食事のスピードもとても鈍化していた。 箸を動かすのが辛いのだ。 食欲はある。 でも体が動かない。 必死で箸でご飯をつまみ、ゆっくりと口に持っていくのであった。 おかずを取るのに手を伸ばすのも辛い。 寄せ箸をしてなんとか自分のほうに引き寄せることが精一杯の抵抗だった。 ⇒続き ⇒目次に戻る |
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