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一ヶ月くらいその生活が続いただろうか。 公園にずっといても暇だという感覚が出てきたので、何かしようと思った。 そのとき思い立ったのが、公園で漫画を読もうということだった。 どうせ何もすることがないのだったら漫画でも読んでいたほうがいいのではないか。 そう思い立ったのだった。 そして、スーパーの袋に漫画を一冊入れ、公園で読みふけることにした。 読みふけるといっても集中することはできない。 ただなんとなく頭をすり抜けていく絵とセリフを眺めながらページをめくっていった。 一冊読むのに二、三日はかかっただろうか。 とにかくとんでもなく遅いスピードで漫画を読み進めていった。 太陽の日差しが暑い。 でも家にいても気が滅入る。 外にいたほうがなんとなく気が紛れる。 たまに吹く風に体が爽やかになる感覚を覚えた。 これは家では絶対に味わえない感覚だった。 外にいる感覚と集中できないが集中している感覚で、少し苦しさは麻痺しているような感覚だった。 それでも少し休憩すると苦しさがやってくるので、ただひたすら読みふけるのだった。 何かしようとするのは苦痛だったが、何かしていないと苦痛を感じるのでとにかく何かしようと思っていた。 公園で一度ブランコをしたことがある。 ブランコに乗るなんて小学生以来だ。 大の大人が平日の昼間からブランコで遊んでいるなんて情けない姿だ。 浮浪者と思われても仕方がないという状況だった。 でも仕方がない。 自分は病気なのだから。 久々にブランコに乗ると、少し高揚した。 あの高いところから降りてくる感じ、そしてまた高いところに上がっていく感じ。 それが繰り返されるのがなんか楽しかった。 私はジェットコースターが大の苦手だが、ブランコは十分に楽しめた。 子供用に作った遊具だから当たり前か。 それほど怖くなることもなく、大人気なく三十分くらい一人で遊んだ。 少し楽しんだこともあってうつの苦しさはほんのちょっと忘れることができた。 でもブランコが終わるとまた苦しさがやってくるので、止まらずに漕ぎ続けた。 そして二時間くらいして家に帰るが、昼ごはんを食べてからまた公園に出かける。 公園に行くことが私の日課になっていた。 奥さんは「外に出ることはいいことだよ」と言って、私を応援してくれていた。 嫌な顔を一つ見せなかった。 こうして私の公園生活は二ヶ月くらい続くことになる。 ⇒続き ⇒目次に戻る |
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